上の画像はアバルトをただ無言で乗るYoutube動画。POVと呼ばれるものだ。
これには楽しみ方がある。iPhoneのYoutubeで、横向きにして親指を画面に押しつけながら観る。
すると、音量をそれほど大きくしなくても、エンジンの振動が指から伝わってきて臨場感が相当量増えるのだ。
この体験から、やはり人は実際のクルマの運転において、音だけじゃなく振動からも快感を感じていることがわかる。
それが上質で滑らかであればあるほど、気持ちがいい。
クルマの場合、主にアクセルからそれは伝わってくるが、そこに敏感になれば、より運転が楽しいということになる。
スピードを出さず、ゆっくり走っていたとしても、足元の振動に気を向ければ、静かで心地よいものが伝わってくるのだ。
おそらく、マフラーで音を大きくしなくても、その振動が心地よければ問題ないはずだ。
同様に、クルマには振動、クリック感が求められる。
代表的なものはドアの閉まる音だが、これも音だけではなく、たとえばカチャっという上質なクリック感があればなおいい。
マニュアル車のトランスミッションもクリック感によって上質感が変わってくるし、各スイッチもカチッとクリック感を感じられたほうがいい。
ドアを開ける際の内側のノブだって、クリック感を足すと上質になる。
クルマ以外のもの。PCや家電においてもこれは当てはまるはずだが、クルマほどそれを求められるものはない。
EVはエンジン回転による快感がなくなるから、よりスイッチ類でのクリック感を重視してほしい。
今のiPhoneは物理ボタンがなくなったが、ご存じのようにクリック感は残した(振動発生装置Taptic Engine)。実にありがたいことなのだ。
クルマでクリック感を求められる本当の理由は、前方を見ながら操作するためだと思われる。
なので、専用スクリーンを操作するスティックもクリック感があるものが多い。
研究資料 自動車用操作スイッチの動特性と操作感覚に関する研究 (PDF)
アクセルに関しては、ネット上では「不快な振動を直したい」という意見が多く、「心地よい振動を感じる」という意見はほぼない。メーカーとしても、振動を無くすという方向にあるようで、たとえばトヨタのシエンタガソリン車などを乗っても、アクセルからのフィードバックは少ない。
ハイブリッドもしくはEVにおいてはもちろんなく、ボルボやルノーキャプチャーといったガソリン車においてもフィードバックを少なくする方向にあるようにみえる。
BMWやMINI、ダイハツコペンなどはあえて残す方向にあるように感じるし、アバルトや、たぶんアルファロメオジュリアにも色濃くありそうだ。マツダに関しては完全に残している。
NAガソリンエンジンの、そのわずかな振動さえ伝えるペダルには、クリック感(吹き上がりの良さ、エンジンフィーリングという言葉とも少し違う)と似たものがあるのだ。
昔の車にはなかった(シルキーシックスなど、いい車にはたぶんあった)、心地よい振動。
このクリック感、振動をもっと楽しみたい。
もしくは、いつかガソリン車がなくなり、ハイブリッドとEVになっても、擬似的なフィードバックをペダルに加えてほしい。
きっと加えられることはないだろうけれども。