ベスパファン必見のニュースです。Piaggioグループジャパンは、戦後のベスパを支えた社内実験部門「Officina 8(オフィチナ オット)」に敬意を表した特別仕様車2機種を、2025年9月6日(土)より全国の正規販売店で発売開始します。
Officina 8とは?
Officina 8は、ポンテデーラ工場に設けられたベスパの“実験部門”であり、試作モデルやレース用車両の開発を担った伝説的なチームです。設計技師や機械工、航空出身のテストライダーらが集い、量産前の試作品を高度な技術と匠の技で生み出しました。それらは現代に受け継がれるエレガントなスタイルの源でもありました。

Vespa Officina 8が意味するもの
歴史を「製品」に落とし込む大胆さ
ベスパが今回選んだテーマ「Officina 8」は、一般ユーザーにはあまり馴染みのない言葉です。通常のメーカーなら「○周年記念」や「限定カラー」といったわかりやすい切り口で特別仕様車を用意するところ、あえて社内の“実験部門”に光を当てたのは、ベスパならではの知的で文化的なアプローチだと感じました。
これは単にスクーターを売るのではなく、「ベスパというブランドに関わるストーリー」を所有者と共有しようとする姿勢の表れでしょう。

工場の匂いをまとった“インダストリアル・ブルー”
今回のマットインダストリアルブルーは、実際の工場設備や作業着を連想させます。一般的な特別色といえば華やかさや高級感を前面に出すことが多いのに、あえて「鉄粉が舞う現場の色」を選んだところに、ものづくりへの敬意を感じました。
スクーター=都会的でスマート、という従来のイメージを超え、ルーツに立ち返る「無骨さ」を見せている点が非常に面白いです。

GTVとSprint、それぞれのキャラクター
- Sprint 150 は、若々しく軽快なキャラクター。小排気量でありながら“工房のDNA”をまとうことで、ただのシティコミューター以上の存在感を放ちます。

- GTV 300 は、力強さと伝統を兼ね備えたフラッグシップ。レーシング風のフェアリングとバーエンドミラーは、往年の耐久レースを思わせる雰囲気があります。

同じカラーリングでありながら、モデルごとに纏う空気が違うのも魅力です。
所有体験を「パッケージ化」する戦略
注目すべきは、金属製ボックスに収められたオーナーズブックや、アパレル・アクセサリー類の展開です。
単なる車両販売に留まらず、「ブランドの世界観を所有者の生活にまで浸透させる」という戦略が見えます。ここまでくると、バイクというよりも「カルチャープロダクト」と呼ぶべきでしょう。AppleがMacを通じてライフスタイルをデザインしたように、ベスパはスクーターで都市生活をデザインしているのだと思います。
日本市場での立ち位置
日本でベスパを買う人は、必ずしも実用性だけを求めているわけではありません。国産スクーターの方が便利で安いのは誰もが知っています。それでもベスパに惹かれるのは、「ストーリーを走らせたい」という気持ちがあるからでしょう。
Officina 8はその欲求に強く響くシリーズであり、所有した瞬間から「自分はベスパの歴史の一部になった」と感じさせてくれるはずです。
Officina 8シリーズの特色
| モデル | Sprint 150 Officina 8 | GTV 300 Officina 8 |
|---|---|---|
| 発売日 | 2025年9月6日(土) | 同左 |
| 価格(税込) | 約60万5,000円 | 約96万8,000円 |
| カラー | Matte Industrial Blue “Officina 8 ブルー” | 同左 |
| 特別装備 | アルミ調トリム/真鍮色アクセント/ダイヤモンドカットホイール/ダブルステッチシート/真鍮リベット装飾/(GTVは同色のシングルシートフェアリングも標準)/マットブラック仕上げバーエンドミラー | 同左 |
| ウェルカムキット | Officina 8の歴史を記したオーナーズブック入り金属ボックス付き | 同左 |
| アパレル・アクセサリー | トップボックス、グローブ(ナックルパッド付き)、ウィンドブレーカー、フーディ、Tシャツ、バッグ、キーホルダーなど | 同左 |
デザインに込められた世界観
- マットインダストリアルブルー:旋盤や作業服などをイメージさせる色合い。
- メタリックアクセント:アルミ調のライト周辺と、真鍮を想起させるホイールスポーク・ステアリング部。
- ダイヤモンドカットホイール:光の角度で輝きを変える精緻な仕上げ。
- シートとデザインパーツ:ダブルステッチと真鍮リベットによるクラフト感。
- GTVのレーシング風フェアリング&ミラー:スポーティで攻めた姿勢を演出。
さらに、マットブラックのバーエンドミラーは、スタイリング全体を引き締めるアクセントにもなっています。
豊かな世界観を楽しめるウェルカムキットとアパレル
いずれのモデルにも、Officina 8の歴史に触れる「オーナーズブック」が収められた金属製ウェルカムキットが付属します。さらに、バイクと世界観を共有するトップボックスやグローブ、バッグ、キーリング、ウェア類(ウィンドブレーカー、フーディ、Tシャツ)も展開。所有者としてのステータスも高まるスペシャルラインです。
「Officina 8」シリーズは、ベスパのルーツとクラフトマンシップへの敬意を現代に再解釈した珠玉の特別仕様車です。見た目の美しさだけでなく、限定アクセサリーや情報アーカイブなど、所有する喜びを余すことなく提供してくれます。ベスパユーザーやスクーター愛好家にとって、見逃せないモデルがこの秋、ついに登場です。
ベスパが投げかける問い
Officina 8は単なる特別仕様車ではなく、ユーザーに「なぜ自分はベスパに乗るのか?」を改めて考えさせるきっかけになる存在だと思います。
“道具”としてのスクーターではなく、“文化”としてのスクーターを選ぶ。そこに価値を見出す人にとって、このモデルはたまらなく魅力的な一台になるでしょう。
