最近、VWの新型？が出ているような気配がしてオフィシャルサイトをチェックしてみたら、たぶんティグアンとかSUVあたりの顔が刷新されているような気がしたものの、2010年代のVWが好きな私にはピンと来なかったので、他のモデルを見ていたら、ポロとパサートあたりが昔の雰囲気を讃えているなぁと思いました。
そこで今回は、パサートをちょっと見てみたいとおもいます。
現行のパサートは、第9世代（通称B9）で、欧州では2023年夏にワゴン専用モデルとして発表されました。
日本では2024年7月に正式発表、同年11月25日に販売開始となっていて、今ディーラーで見られるパサートは、すべてこの最新デザインのB9型ということになります。
ボディは全長4915mm×全幅1850mm×全高1500mm、ホイールベース2840mmと、先代よりひと回り大きくなりましたが、空気抵抗係数は0.31から0.25へ大きく改善されています。おっとそんな情報はどうでもいいですが、
「歴代で最も大きくなったのに、いちばん滑らかに風を切るパサート」というのが、今回のデザインの前提条件になっていると言えます。
フォルクスワーゲン全体で見ると、この「最新パサート顔」はブランド全体のデザイン言語の延長線上にあるそうです。ゴルフでもポロでもディグアンでもない感じですが、たしかに、EVのID.3／ID.4ファミリーのフロントマスクとライトシグネチャーに似てなくもないです。
内燃機関系の量販車では、
- ゴルフ：8代目ゴルフ8が2019年末に欧州発表、日本では2021年6月発売。ここでメーター一体のデジタルコクピットと、シンプルなフロントマスクが導入
- ティグアン：3代目ティグアンが2023年秋に発表され、「水平のバーでライト同士を結ぶ、新しいデザイン言語」を採用。エアロもCd0.33→0.28に改善されています。
という順番でアップデートされ、そこに「ワゴンの旗艦」として最新パサート（B9）が続いた形になります。パサートはMQB evo世代のシャシーとコクピットを採用した、VWの“第2世代・新デザイン言語”の中心モデルと言ってよさそうです。
新型パサートのエクステリアを改めて眺めると、「風を感じる造形」というオフィシャルコピーが、単なるキーワードではなく、かなり真面目に形に落とし込まれていることがわかります。
まずフロントは、従来のような大きなグリルではなく、薄い開口部とヘッドライトをつなぐ水平バーで構成され、その中に“IQ.LIGHT”と呼ばれるマトリクスLEDヘッドライトが組み込まれています。
バンパー下のエアインテークは縦要素を強調したデザインで、顔つき全体としては「薄く・ワイド」で、空気を切り裂くというより、流れに乗って滑っていくような印象です。ここの大きさはVWで一番で、迫力あります。
サイドビューは、今回のパサートのハイライトです。約4.9mのロングボディに対して、ウエストラインをほぼ一直線に引きながら、ルーフは後方にかけてゆるやかにテーパーさせています。
昔のステーションワゴンにありがちな「箱感」を排除し、ワゴンでありながらファストバックに近い伸びやかさを出しているのがポイントです。ボディ側面のプレスラインも極力抑えめで、光の移ろいで陰影を作るタイプの“静かな造形”になっています。
リアは、横一文字のLEDライトバーで幅広さを強調しつつ、バンパー下側はかなりクリーンにまとめられています。ワゴンとしての積載性を犠牲にせず、でもSUVほどゴツくは見せない――「高級ワゴン」としてのさじ加減が絶妙だと感じます。
空力面では、こうしたシンプルな面構成とルーフ後端・リアピラーまわりの処理により、Cd0.25という値を実現しています。先代の0.31からの大幅な低減で、ロングツアラーらしい高速燃費と静粛性に直結する部分です。
デザインを総合して見ると、新型パサートは「SUV全盛の時代にあえてワゴン専用に振り切ったフラッグシップ」として、とても理にかなった形になっていると感じます。
・フロントは主張しすぎないが、ライトシグネチャーで“VWの最新型”だと一目でわかる顔。
・サイドはワゴンらしい実用性と、クーペほどやりすぎない伸びやかさのバランス。
・リアはワイド&ローを強調しながら、積載性をきちんと残した落としどころ。
結果として、「ドイツ語で貿易風＝Passat」という名前どおり、派手なスポーツカー的な速さではなく、ロングツーリングでじわじわ効いてくる“風との相性の良さ”がデザインから伝わってくるクルマになっていると思います。
というわけで、じっとみていたらたしかにゴルフ8顔だなとか思ってきましたが、やっぱりライトは少し角があったほうがいいなと思わせるというか、パサートのライト形状はいいなと思います。