クルマとバイクの雑談。

ロングストロークには誤解が多いと気づいた。

ロングストロークエンジンの仕組みを知るにつれて、今まで言われてきたこととの矛盾が見えてきました。

たとえば、一部の動画では「バルブを大きくすることで空気の流入量が大きくなるので、ショートは高回転まで回せる」というもの。

「バルブを大きくすると、混合気の流入スピードが遅くなるので、音速まで達するのも遅く、高回転まで回せる」という説と違います。

ロングストロークであっても高回転を目指さないわけではなく、流入口をなるべく大きくするといった努力の末、7000回転前後にするのがスタンダードです。

その上で、「7000回転ならトルクを中高回転域にする必要はない」と判断して、低回転で最大トルクが出るようにします。

そのために、吸気管の長さを細長くします。

最大トルクをどの回転域にするかは、ロングでもショートでも自由です。

ここも勘違いしてました。「ロングストロークだから低回転トルクになるのだ」と思っていたのですが、これはショートでもロングでも関係なく、吸気管の長さだったのです。

なので、トルクの回転域設定は任意です。

たとえば車では前回紹介したとおり、中回転域に設定したマツダのロングストロークエンジンがあります。

ロングで高回転域に設定したのはSVR250(YAMAHA)で、6500rpmです。

軽いフライホイールで吹け上がりを良くしています。

ショートで低回転域にすると、高回転で馬力を得られないので、なかなか実現しません。

このように、最大トルクをどの回転域にするかは自由。ロングだから絶対的に低速トルク、というわけではないのです。

フライホイールを重くするかどうかも、ロングストロークの宿命ではありません。

ただ、長いコンロッドのおかげでフライホイールを大きくできるので、重たくもできて、慣性力をいかせます。それは低燃費にもなります。

その重いフライを回すためには、低回転域にトルクが必要なのです。

重いフライを回すメリットは多くありますが、デメリットは高速域でパワーを得られないことです。

最高速を出しません。

古いビンテージのバイクは、それでもユーザーが受け入れてくれます。

GB350も当初は驚いた人も多かったはずですが、だんだんと認知されて、「スピードが出ないけど味のあるバイク」とされてきました。

この、「スピードが遅く、吹き上がりがもっさりしてる」という特長を最初に受け入れてもらえない限り、重いロングのエンジンは成立しないのです。

当初私は、ロングストロークエンジンについて、「ロングにすることでトルクがアップする? だから重いフライホイールを回せる。回転は滑らかに、鼓動豊かに、燃費も良くなる」という順序で考えていました。

ですが、ロングの使われ方はメーカーそれぞれ。重いフライにするのは一部のバイクに残っているだけです。

フライ(クランクウェブ、バランサー)が重いかどうかは、スペックには明記されません。なので、最大トルクの回転域で予想します。低回転だと重い可能性があるのです。

ですが、初期型のSR400は事情があり、ショートで重いフライ、高回転型トルクという、非常に珍しい設定。

最終型で低回転型トルクに変更して、ショートながらロングらしい味わいを徹底することになりました。

バランサーを軽くすることを目的にしているバイクもあります。たとえばMT-07は、ショートで最大トルクは高い回転数域にあります。しかも、振動を打ち消す270度クランク並列2気筒。なるべくクランクウェブを軽くして、簡単に回る設定を目指していることを明言しています。

ボルトはロングストロークで最大トルクが3000rpm。ボアストロークはスクエアなので、ある程度重い可能性があります。なので、ハーレーのような鼓動を表現しつつ、Vの角度は60度にして、45度よりは回すと鼓動を打ち消すようなエンジンになっています。でも90度ではないので、どんどん振動が大きくなります。

・ショートにしてもロングにしても、排気量が同じならトルクは同じ

・重いフライホイールするかどうかは自由。ロングでもショートでも。

・最大トルクの回転域を高くするか低くするかは自由。ロングでもショートでも。

・ロングは高回転が望めない(バルブの流入口が狭いため、音速に近づく)。ピストンの上下も速い。

・ロングにして、バランスのとれたフライで回せるエンジンも可能(馬力もある程度出る)

・重いフライは高回転域で息切れしやすい

・重いフライはいい言い方で「粘りがある」「安定感がある」、悪い言い方で「もっさりしている」

・重いフライは低燃費

・ロングストローク(小さいボア)は低燃費

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