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ランドローバー・ディスカバリー 5回目のフルメイクオーバーから見えるもの

 

3500kgの牽引力でどんな重いものでも引っ張れるし、川だってガンガン渡れる(現行ランドローバーで一番背が高い)。

この車に乗っているだけで、たとえば北米の荒野の真ん中に取り残されても、どうにか脱出できる自信が湧く。

でも、この5代目のフルメイクオーバーを果たしたディスカバリーは、荒野ではなく、どうも都会を意識しているように見える。

「サファリも旅する気持ちもあるけど、基本的に都会で乗ります」というメッセージが聞こえてくるのだ。

 

でもプロモーションは荒野の中。

悪路はアクセル操作が自動にできるから、岩の坂をかけのぼる姿がある。大自然での本気度をアピールしているのだ。

 

このランドローバー・ディスカバリーにオフィシャルが出したメッセージは

Weekends will never be the same again 同じ週末は決して訪れない

 

そして上の写真だ。

実際に朝陽や夕陽の時間にこんな場所にいる人は相当の強者だ。

サバイバーにしかこんなことはできない。7人乗せてこんな写真のところに行かない。

でも、ディスカバリーはそんなサバイバー(あなたに)に相応しいのだというメッセージは、都会にいる人にほど心に届く。

「いつか行ってみたい」

人はそう思うからだ。

 

ディスカバーに乗り、鎧をまとったあなたは、高層ビルの合間でもサバイバーになれる。

「週末は荒野を走っているのだ」という男になれる。

 

 

「いらない性能はいるし、いる性能はいる」それがプレミアム

 

アメリカ人は実用性を評価し、実際の性能を鋭く吟味する。

いらない性能はいらないし、いる性能はいる。

値段にも究めてシビアだ。憧れない。

 

欧州人はブランドイメージを大切にする。

ブランドのためだったら何だってする。

性能を高めるのは、実際に使うからではなく、ブランドのため。

プレミアムのためだ。

 

そして、そのプレミアムイメージを、お金持ちや欧州以外の人々が好きなのも知っている。

 

だから欧州生まれのディスカバリーは「いらない性能はいるし、いる性能はいる」。

お金があるなら、小さなリゾート島に暮らしてたって所有する車なのだ。

小さなリゾートは酷いが、日本という小さな島でもそうだ。

オフィシャルサイトのようなまっすぐ伸びた道を駆け抜けることはこの国ではできない。

 

私はお金がないけれど、そういう発想自体は好きだ。

「これはどんなライフスタイルを実現させる車なのか」

それを実際に使うかどうかは置いておいて、コンセプトとして持ってほしい。

 

1989年に登場した初代ディスカバリーは、800万円以上するレンジローバーの廉価版として300万円台で購入できた。

コストのかかる部品を省いたのだ。オフロード性能は落ちていた。

プレミアムではなく、価格には納得のできる車だった。

2代目はオンロード性能も高め、中古車は人気だ。

 

しかし、プレミアムへのステップアップは早々に訪れた。

3代目で600万円のプレミアムSUVになったのだ。

今はイヴォーグといった日本でも人気の完全都会向け車種もあるし、レンジローバーとディスカバリーの差もあまりない。

だけどプレミアムになったレンジローバーは、その理由たるオフロード性能で業界一番になることを重要視している。

それ以外に、値段が高くなる理由をつけられないからだ。

 

日本人は特に、輸入車のプレミアム感が好きだ。

「この車にはドイツのアウトバーンの匂いがする」だったり、「イギリスの狩猟のイメージがする」といったレンジローバー的なものだったり。

日本にはない、普段触れられないライフスタイルの鎧をまとえるのが、輸入車だからだ。

しかし、実際に輸入車のイメージというものを実現することはできない。

車は自分の国で乗るもの。船に乗せて大陸に持ち込んだりはしない。

どんなにグローバルな社会になっても、それは変わらない。

 

私は国産車だが、そういった「実現しないライフスタイルの鎧」が好きなのだ。

無駄で、「いらない性能」だったりするのに、何か自分を高揚させてくれる。

実際に大きな輸入車SUVに女性が一人で乗っていると素直にかっこいいと思う。

週末その人が山道を往くわけでもないのだが。

 

国産車がそういったメッセージを作り出すことができればと思うこともあるが、国産車の立ち位置としてはそれでアメリカで売れているというのもあると思う。

無理に値段をあげず、壊れない燃費のいい車を作る。そこに需要があるのだ。

スバルだけは「人が憧れるライフスタイルを実現する車」という方向性が決まっていて、乗っている人がみんな週末アクティブな感じがする。

実際はそうではないのに、そうなるところが輸入車と同じプレミアムなのだ。

 

マツダは、その「いらない性能」をあまりプロモーションせず、「都会の車」というやり方で値段を抑えている。

ホンダは、「こどもと一緒にどこいこう」という革命的CM以来、曖昧なメッセージから抜け出せずにいる。

トヨタは、車種が多すぎてわからない。

ボルボは、最近のだと「週末は日がのぼる前から針葉樹林の間を走り抜けていく」成功者。

ドイツのプレミアム御三家はそういったプロモーションの雄で、説明はいらない。

 

レクサスやインフィニティはどうだろう。

何を持ってプレミアムとしているのか。

ジャーマン3のように、高性能ハイパワーで峠を駆け抜けるイメージだろうか。

レクサスは素直にそれを後追いしているとして、インフィニティは気になる。

あの素晴らしいデザインをどのようなプロモーションとコンセプトでやるのか。

また久しぶりにプロモーションを見てみたい。ディスカバリーに学ぶところはあるかもしれない。

 

 

 

 




  
 

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