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個人的にはすっきりしないレッドブル・ホンダのタイヤ戦略と今後の対策。

2019年F1ハンガリーGP決勝。ポールポジションを取ったのはレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペン。旋回能力に勝るレッドブルと、抜きにくいサーキットといわれるハンガロリンクの相性から、そのままレッドブルの優勝も期待されていたが、最後の最後にメルセデスのハミルトンに抜かれてしまった。

見ていた人には、なぜ負けたのかがはっきりと分かる結末だった。

レース中盤までフェルスタッペンとハミルトンの独走状態となり、後続を二人は引き離していた。通常ならば、タイヤは一度交換しているので、そのままゴールまでタイヤを保たせて走る。ピットインすると20秒ほどの差が生まれてしまうからだ。

が、メルセデスは49周目、残り21周でピットインという駆けに出た。ミディアムタイヤに履きかえ、猛追する作戦をとり、「ギャンブルだ」と実況が言うほど。

0.2秒ほどの差から、20秒も差がでれば、もう勝てないと思うのが普通だ。

しかし、新品のミディアムタイヤは1分19秒というタイムを刻む。フェルスタッペンはおよそ20秒。1秒の差は大きい。しかし、ハミルトン側も心配で、猛追するせいでタイヤもブレーキも最後まで持つかどうかはわからない。本人はそれを心配して無線で伝えるが、チームは「全力でいけ」と指示をする。

同時に、フェルスタッペンのタイヤも消耗していく。

差は見事なまでに縮んでいった。15秒、10秒、8秒…。本当にフェルスタッペンはタイヤを替えなくていいのか。誰も判断できない状況となった。レッドブルスタッフは頭を抱えている。

結局、フェルスタッペンのタイヤは終盤まで持たず、1分20秒後半を刻むようになり、ハミルトンは18秒や19秒をキープ。67周目、残り3周でフェルスタッペンを逆転した。

この結果について、フェルスタッペンは後悔めいたことを言わず、「マシンが遅かっただけ。戦略に間違いはない」とコメントした。

しかし、そうだろうか。

今後も同じようなシチュエーションが出てくるだろうし、フェルスタッペンがハミルトンを追う展開もある。

そのときに、今回の教訓は生かされなければならない。

レッドブルがハミルトンの2回目のピットストップに対応できなかった理由は、

1.想定してなかった

2. ピットストップすると2位になるから

何もせずに残ることをステイアウトと言うが、ステイアウトしなければならない心理として、「ハミルトンに詰められた状態で先にピットストップをされたので、その次にフェルスタッペンがピットストップすると、2位になってしまうので、できない」となる。

しかも、「そもそもメルセデスが速かったので、同じタイヤ交換のタイミングだと、勝てない」という心理。

また、想定していなかったため動揺し、タイミングをどんどん逃してしまった。

今後、この事態に対応するためには、まず今回のような2位と3位が離れている場合に、2位はピットストップという戦略があるということを想定し、対処しなくてはならない。

残り20周のハードタイヤとミディアムタイヤでは勝負にならず、トップを維持できないということだ。2位の場合、そのまま走っても逆転できないので、今後は同じシチュエーションでピットストップ戦略を採るパターンが増えるだろう。

1位の場合は、それを想定し、先にピットストップするという駆け引きをしなくてはならない。たとえ2位との差がなくて、ピットストップ後に2位になったとしても、相手がその後ピットストップすれば逆転するし、しなければ残り数周で逆転できる。

駆け引きに負けて、後にピットストップになるとしても、やらないよりマシだ。

まずは2位になるが、とりあえず戦える。

また、数周遅らせることで、後半に相手よりタイヤが若干有利になる。これは相手が早めのピットストップをした場合のみ有効となる。(※これこそギャンブルだ)

1位が早めにピットストップして、2位が1位になったあとに、遅めにピットストップすると同様にタイヤに差が出るが、その場合は最終的に元の順位に戻った上での、比較的フレッシュなタイヤ同士の対決になるので、元の1位が有利なのに変わりはない。

こういった対策は今回採用されなかったが、理由としては「メルセデスのほうが速かったから」として片付けている。だが、フェルスタッペンは逆転されたあとにミディアムに履きかえ、ファステストを取った。

だから、「マシンが遅かった」なんて言い訳は聞きたくないのだ。

ちなみに、ハミルトンは20秒近くの差を逆転したのだから、最後にフェルスタッペンがピットインすると、両者には同じだけの差が生まれた。

フェルスタッペンが消耗したタイヤを残り20周で替えていれば、20秒近くは稼げていたということにもなる。

もっといい勝負をしていたということだ。

今回は、そういうことを考えているうちに、時は過ぎていった。ハミルトンの2回目のピットストップのすぐあとに追随しても、2位のまま逆転できないという心理は大きかったと思う。そうさせないように、先のピットストップもしくは同時ピットストップを狙うべきだったのだ。