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250ccも1000ccも騒音規制に違いなし。じゃあ、 バイクの排気音はどうやって作られている?

250ccと1000ccのバイクでは、一般的に1000ccのほうが迫力のある排気音を出すというイメージ。ところが、250ccでもマフラーを外して直管にすれば、相当な音量になります。場合によっては、ノーマルの1000ccより大きな音を出すこともできるはずです。

ということは、排気量と音量は必ずしも比例しないということになります。

なのに、250ccと1000ccの市販車で排気音が違うのはなぜ? 大型バイクだけ、特別に大きな音を出すことが認められているのでしょうか。

そこで、実際の騒音規制を調べてみました。

250ccも1000ccも、実は騒音規制のクラスが同じだった

日本のバイクには、騒音に関する保安基準があります。現在の国際基準に対応した規制では、バイクの騒音をClass I、Class II、Class IIIという3つに分類しています。

そして、その分類に使われているのは排気量ではなく、最高出力と車両重量の関係です。

PMR(Power to Mass Ratio)という数値を用いて、次の計算式で求めます。

PMR=最高出力(kW)÷(車両重量+75kg)×1000

75kgは規定上の乗員重量です。つまり、エンジンの最高出力に対して、どれくらいの重量を持つバイクなのかを計算しています。

その結果、次の3つのクラスに分けられます。

分類PMR市街地加速走行騒音
Class I25以下73dB
Class II25超~50以下74dB
Class III50超77dB

ホンダのGB350Sは348ccの空冷単気筒で、最高出力は15kW、車両重量は178kgです。

計算するとPMRは約59.3。つまり、GB350SはClass III。市街地加速走行騒音の規制値は77dB。

250ccのスズキGSX250Rは最高出力18kW、車両重量181kgなので、PMRは約70.3。こちらもClass III。

カワサキのZX-25R SEも、250ccながら34kWという高出力なので、PMRは約131.3。もちろんClass III。

そして2026年8月に発売された新型CB400 SUPER FOUR E-Clutchは、PMRが約164.1。これもClass IIIです。

今度は1000ccのホンダCB1000 HORNETを計算してみます。最高出力112kW、車両重量211kgなので、PMRは約391.6。

こちらもClass IIIです。

そこで、国内で販売されている、あるいは近年販売されていた250ccから1000ccクラスの代表的なバイク30車種について、メーカー公表の最高出力と車両重量から分類してみると、30車種すべてがClass IIIでした。

GSX250RもGB350Sも、新型スーフォアもCB1000 HORNETも、市街地加速走行騒音の規制値は同じ77dBなのです。

ちなみに、この77dBという数字はマフラーの出口で測定した排気音の大きさではなく、走行するバイクの側方で測定した騒音から規定の方法で求めるもので、排気音だけでなく、吸気音やエンジン本体から発生する機械音、タイヤから発生する音なども含まれます。

また、同じClass IIIだからといって、実際の音量が同じというわけでもありません。規制値はあくまで上限であり、メーカーはその範囲内で車種ごとに異なる音量や音質を設計しています。

つまり、大型バイクだから特別に大きな排気音を許されているわけではないのです。

では、同じ規制の中で、メーカーはどのように音を作り分けているのでしょうか。

GB350からハーレー、新型スーフォアまで。メーカーは排気音をどう作っているのか?

カワサキ W230:233ccでも低音と鼓動感を追求

排気量が小さくても、低音を重視したバイクがあります。カワサキのW230です。

233ccの空冷単気筒ですが、カワサキはマフラーの排気音を、深い低音と加速時の鼓動感が得られるように調整しています。一方、巡航時には排気音量を風切り音とほぼ同じレベルに抑えているとのこと。

面白いのは、その音作りのために、1960年代のメグロ・ジュニアS8の実車を借りて、当時の排気音を研究したという話。開発時に試作したマフラーは30本を超えるそうです。

233ccでも、マフラーの設計次第で低音や鼓動感を楽しめるという一例です。

ホンダ GB350:単気筒の鼓動を、音としてはっきり伝える

最初に紹介したいのは、ホンダのGB350シリーズです。

GB350は、音を大切にして開発されたことがよく分かるバイク。ホンダは開発初期からサウンドの質を検討し、単気筒ならではの鼓動感を音として伝えることを重視しています。

具体的には、重厚な低音を中心にしながら、弾けるように急激に立ち上がる高音成分を加えています。

実はここが重要なところで、単純に低音だけを大きくしたわけではないのです。

低音だけでは音の輪郭がぼやけることがあります。そこに高い周波数の成分が加わることで、一発一発の燃焼がはっきりと聞こえるようになります。

また、GB350のマフラーは1室構造の膨張室を採用し、大径のテールパイプを組み合わせています。マフラー内部の排気管長を後端部まで確保することで、低回転域のトルクと排気音の両方に配慮しています。

さらに面白いのは、ホンダが音と鼓動感を別々に考えていないことです。

GB350では、燃焼による力の発生、車体に伝わる振動、タイヤが路面を蹴る感覚、そして排気音が一連の動きとして感じられることを重視しています。

排気音だけが先走ったり、エンジンの振動だけが強くなったりするのではなく、一回の燃焼を「ドン」という一つの感覚として伝えることを目指しているのです。

さらに、回してもほどよい鼓動感を感じつつ、Lツインのように回せるエンジンになっています。ここが純正だけの美味しいところ。

ホンダ CBR250RR:2本出しマフラーで音を作り分ける

一方、同じホンダでもCBR250RRは、まったく違うアプローチです。

CBR250RRは水冷直列2気筒エンジンを採用していますが、右側2本出しのマフラーが単なるデザインではなく、音響設計の一部になっています。

サイレンサー内部を3つの部屋に分け、2室目と3室目からそれぞれ排気管を出すデュアルテールパイプ構造を採用しています。

それぞれの排気経路によって音の特性が変わり、その組み合わせによって低回転では力強く、中高回転では高揚感のあるサウンドになっています。

つまり、マフラーの出口を2つにすることで、単純に音を大きくしているのではなく、回転域によって異なる音の印象を与えるように調整しているのです。

GB350が一発一発の燃焼を際立たせるのに対して、CBR250RRは回転数の上昇によって変化する音を楽しませる。目指しているものが違うことが分かります。

カワサキ ZX-25R:250ccで4気筒を採用する意味

【写真18枚】カワサキ「Ninja ZX-25R SE KRT EDITION」 - webオートバイ

カワサキのZX-25Rは、直列4気筒というエンジン形式そのものが大きな個性になっています。

250ccを4つの気筒に分けているため、1気筒あたりの排気量はわずか約62cc。この小さな気筒を高回転まで回すことで、独特の甲高いサウンドが生まれます。

ZX-25Rは17000rpmを超える回転域まで回るエンジンを採用しており、一般的な250ccの2気筒とは明らかに異なる音を楽しめます。

しかも、カワサキはZX-25Rの吸排気サウンドを細部まで作り込んでいます。

ZX-25Rには、エンジン性能を高めるラムエアシステムが採用されていますが、吸気音もライダーが感じるサウンドを構成する重要な要素です。

250ccの4気筒は、低回転では1000ccの4気筒のような重厚な音を出しにくい反面、非常に高い回転数まで回すことで、まったく違う魅力を持つ音を作ることができるのです。

ホンダ CB400 SUPER FOUR:新型スーフォアは吸気音まで作り込んだ

そして、2026年に復活したホンダのCB400 SUPER FOUR E-Clutch。

この新型スーフォアも、排気音にはかなりこだわっています。

搭載する399ccの直列4気筒は新設計で、最高出力58PSを11500rpmで発生します。

排気系には、美しい曲線を描いた4-2-1集合方式のエキゾーストパイプを採用。4-2-1というのは、4本の排気管をまず2本にまとめ、最後に1本に集合させる構造です。排気管の長さや集合する位置によって、排気の脈動やエンジンの出力特性が変わります。

さらに新型スーフォアでは、マフラー内部の各室をつなぐ連通管の直径や長さを調整しています。

これは単純に消音するためだけではありません。直列4気筒ならではの、伸びのある連続したサウンドを生み出すための調整です。

しかも、吸気音にも手を加えています。

新型スーフォアは、燃料タンク下にエアクリーナーを配置するダウンドラフト式の吸気系を採用しています。そして、吸気ダクトを2本設け、それぞれ異なる周波数特性を持たせています。

さらに、4本の吸気ファンネルも異なるサイズに設計されています。

これによって、異なる音域の吸気音を組み合わせ、回転数が上昇したときに気持ちのよいサウンドが聞こえるようにしているのです。

つまり、新型スーフォアは排気音と吸気音の両方を使って、直列4気筒の魅力を作り上げています。

ちなみに、先代のCB400 SUPER FOURはHYPER VTEC Revoを採用していましたが、新型は新設計の4気筒エンジンに生まれ変わっています。

先代とまったく同じ音を再現するのではなく、新しいエンジンと吸排気システムによって、現代のスーフォアらしい音を作っているのかもです。まだ実際に聴いたことはないですが。

ホンダ CBR600RR:純正でも迫力ある4気筒サウンド

599ccの直列4気筒を搭載するCBR600RRも、排気音が印象的な一台です。

2024年モデルでは最高出力121PSを14250rpmで発生。排気管の太さや構造も高回転・高出力化に合わせて最適化されています。

特徴的なのは、低中回転では重低音が響き、高回転では乾いた甲高い音へと変化すること。しかも、純正のセンターアップマフラーでも十分に存在感のあるサウンドを楽しめます。

250ccのZX-25Rとも、1000ccの大型4気筒とも違う、600ccスーパースポーツならではの音の厚みと高回転の伸び。

ヤマハ MT-07:吸気音をライダーの耳に届けるという発想

ヤマハの2025年モデルMT-07も、非常に興味深いサウンドチューニングを行っています。

MT-07は、270度クランクの並列2気筒エンジン。270度と450度という不等間隔燃焼によって、独特の「ゴロゴロ」という音が生まれます。

ヤマハは、この音を積極的にライダーへ届けるため、「アコースティック・アンプリファイア・テクノロジー」を採用。

具体的には、エアクリーナーボックスの吸気口から発生した音を、燃料タンクカバー内部の空間を利用して増幅し、ライダーの耳に届きやすくしています。

しかも、ただ吸気音を大きくするだけではありません。

スロットルを半分程度開けたときに、特に気持ちよく聞こえることを狙っているそうです。

このように、ライダーがアクセルを開けた瞬間に聞こえる音まで設計しているのです。

ヤマハは、この技術をMT-09やMT-10などにも採用しています。

これまで、バイクの音といえばマフラーを交換することばかりが注目されてきましたが、吸気音をコントロールすることでも、ライダーが感じるエンジンの迫力を変えられるわけです。

しかも、吸気音をライダーの近くで聞かせる方法なら、マフラーから周囲に向けて大きな音を出す必要もありません。

現在の騒音規制に対応するための、新しいサウンドチューニングの方向性ともいえそうです。

カワサキ W800:360度クランクの音を低音に仕上げる

カワサキのW800は、360度クランクを採用した773ccの空冷並列2気筒エンジンを搭載しています。

1気筒あたりの排気量は約386.5cc。GB350よりも少し大きな排気量を持った気筒が、交互に燃焼しているわけです。

しかも、360度クランクなので燃焼間隔は等間隔。

この構造が、歯切れのよい独特の排気音を生み出します。

ただし、W800の音もエンジン形式だけで決まっているわけではありません。

カワサキは、W800のエキゾーストシステムについて、内部構造を入念に作り込むことで、360度クランクならではの等間隔の燃焼パルスを低く重厚なサウンドにチューニングしたと説明しています。

さらに、絞ったテールパイプによって、心地よい排気音を実現しています。

つまり、360度クランクのリズムをそのまま大きな音として出すのではなく、そのリズムを生かしながら、低音の響きを整えているのです。

ちなみに、現在のトライアンフ・ボンネビルT120は、同じ並列2気筒でも270度クランクを採用しています。

かつての英国製並列2気筒が持っていた等間隔の歯切れのよさとは異なり、現在のボンネビルは不等間隔燃焼による独特のうねりを持った排気音になっています。

同じクラシックスタイルの並列2気筒でも、燃焼間隔によって音のキャラクターが変わるという、分かりやすい例です。

ホンダ CB1100 EX:4気筒なのに「ドロドロ」という音を作る

ここで、もう一台面白いバイクを紹介したいと思います。

すでに生産を終了しているホンダのCB1100 EXです。

CB1100 EXは1140ccの空冷直列4気筒ですが、ホンダはあえて滑らかな4気筒の音だけを追求していません。

2014年モデルの開発では、4本の排気管をまとめる部分で、1番・2番と3番・4番の排気管を連結させず、意図的に「ドロドロ感」を演出しています。

さらに、マフラーの内部構造やテールパイプの直径、エキゾーストパイプの内径や板厚など、さまざまな組み合わせを試作しています。

そして、すべての組み合わせを実際に走らせながら、排気音と走りのバランスを確認したそうです。

これはかなり興味深い話です。

直列4気筒というエンジン形式は変わっていません。しかし、排気管の接続方法やマフラーの内部構造によって、音の印象を変えることができるのです。

CB1100 EXでは、4気筒の滑らかさだけではなく、昔の空冷バイクらしい味わいを残すことが重視されていました。

カタログ上の最高出力だけでは分からない、エンジンの魅力を作り出していたのです。

ハーレーダビッドソン:45度Vツインの音を守るため、ほかの音を抑える

そして、排気音を語るうえで外せないのが、ハーレーダビッドソンです。

ハーレーの伝統的なV型2気筒エンジンは、シリンダーの挟み角を45度としています。

さらに、2本のコンロッドが同じクランクピンを共有する構造によって、燃焼間隔は315度と405度になります。

これが、あの独特のリズムを生み出す基本的な仕組みです。

よく「ハーレーの三拍子」といわれますが、315度と405度の不等間隔燃焼が、その音の基礎になっています。ただし、三拍子としてどれほどはっきり聞こえるかは、アイドリング回転数や点火時期、排気系の特性などによっても変わります。

注目したいのは、ハーレーも単純に排気音を大きくしているわけではないということです。

例えば、ミルウォーキーエイトの開発では、エンジンから発生する機械音を抑えることによって、排気音を際立たせるという方法が採用されていて、バルブやカムシャフトなどの動作によって発生するメカニカルノイズを低減し、伝統的なVツインの排気音がより豊かに聞こえるようにしています。

また、2025年モデルのストリートボブでは、ミルウォーキーエイト117クラシックと新しい2-in-1エキゾーストを組み合わせて、エンジン性能を確保しながら深みのあるサウンドを実現するため、軽量の音響素材などを使用しています。

つまり、ハーレーも伝統的な燃焼間隔だけに頼っているわけではなく、最新の排気システムによって、あの独特の音を作り込んでいるのです。

ハーレー Revolution Max:同じハーレーでも燃焼間隔は違う

では、同じハーレーでも、ナイトスターやスポーツスターSはまた違います。

Revolution Maxは、伝統的な45度Vツインとは根本的に異なるエンジン。

シリンダーの挟み角は60度で、クランクピンの位相を30度ずらすことで、270度と450度の燃焼間隔を実現してます。つまり、MT-07やボンネビルT120と同じ燃焼間隔。

ただし、エンジンの構造はV型と並列で異なるため、同じ音になるわけではありません。以前に所有していたので掲載しましたが、基本的に排気音や鼓動がないというか、それによって高回転まで回せるのが90度ツイン(270度位相)の思想なので、その特性は非常に良く出ていて、回しても回してもスムーズです。

それが、鼓動重視のハーレーファンに響いてないのが現状です。

バイクの排気音は、単に大きければよいというものではない

こうして見ていくと、メーカーによって実にさまざまな方法で音を作っていることが分かります。

単気筒の低音と高音を組み合わせるGB350。

2本出しマフラーで低回転と高回転の音を作り分けるCBR250RR。

250ccの4気筒を高回転まで回すZX-25R。

排気系と吸気系の両方を作り込む新型CB400 SUPER FOUR。

吸気音をライダーの耳に届けるMT-07。

360度クランクの燃焼パルスを低音に仕上げるW800。

4気筒でありながら、あえて「ドロドロ感」を演出するCB1100 EX。

そして、45度Vツインの音を守りながら、機械音まで抑えて排気音を際立たせるハーレー。

燃焼間隔や気筒数、回転数、排気管の形状、マフラー内部の構造、吸気音、機械音など、さまざまな要素を組み合わせて作られているのです。

というわけで、最初の疑問。

250ccでも直管にすれば大型バイク並みの音量を出せるのに、なぜ市販車ではそれほど大きな音がしないのでしょうか。

まずメーカーは、排気量に応じて自由に音量を大きくしているわけではありません。決められた規制値の中で、そのエンジンにふさわしい音を作っています。

しかも現在のバイクでは、騒音規制だけでなく排ガス規制への対応も欠かせません。触媒や排気管、サイレンサーを含めた排気システム全体で、エンジン性能と環境性能、音質のバランスを取る必要があります。

排出ガスを浄化する触媒(キャタライザー)は、排気管の中に設置されるため、排気の流れや圧力波の伝わり方にも影響するようです。さらに、触媒の浄化性能を確保するには排気温度や設置場所も重要で、メーカーは排気管の長さや太さ、サイレンサー内部の構造などを総合的に設計する必要があるとのこと。

つまり、排気音の違いはエンジンの構造だけでなく、排ガス規制に対応するための技術にも影響を受けているようです。

ただ、いろいろあるとしても、大型バイクの排気音に迫力を感じるのはなぜでしょう。

その理由の一つが、低音成分の違いです。大排気量エンジンは低回転でも力を発揮しやすく、比較的低い回転数で走行できるため、低音の厚みを生かしたサウンドに仕上げやすいという特徴があります。また、1気筒あたりの排気量や燃焼間隔、マフラーの構造なども低音の響きに関係しています。

ただ、仕上げやすいというだけであって、小排気量だから低音が出せないわけではありません。W230のように233ccでも低音と鼓動感を追求したバイクもあれば、CBR600RRのように600ccで重低音から甲高い高回転サウンドまで楽しめるバイクもあります。

排気量が小さくても、最初から迫力あるサウンドを響かせるバイクに出会ってみたいものです。

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