ジュネーブでAMG GTのコンセプトが発表されたとき、このGTルックのデザインが今後のメルセデスのデザイン言語になるのではないかと予想したが、やはりそれは間違いないようだ。
上海オートショウで4月18日に発表されたのは、「パンアメリカーナスタイル・グリル」を導入したコンセプトAというセダン。ダイムラーAGのデザインチーフであるゴーデン・ワグナーは、「これ(コンセプトのデザイン)は『センシュアル・ピュリティ』の次世代のマイルストーンであり、新デザイン時代を導くポテンシャルを持っている」と発言している。
Sensual Purityは直訳で「官能的純粋さ」で、デザイン・フィロソフィーとしてメルセデスが数年前から設定しているものだ。
ダイムラーAGデザイン部門が「現代的なラグジュアリーの世界」をクリエイトするためにキーワードとして掲げているのが「Hot and Cool」。
恋に落ちるHotと、先進的な未来を感じさせるCoolを両立させるもの。
そのために、ピュアなフォームを追究し、官能的な表面を生み出す。それがセンシュアル・ピュリティだと言う。
コンセプトAの大きさはCLAを小さくしたもので、長さは180インチ(457センチ)、横幅73.6インチ(187センチ)。高さは57.6インチ(146センチ)。予想では次世代CLAもしくは「第五のモデル Aクラスセダン、」ではないかと見られている。
ホイールは20インチ、長く伸びたフードにパワードームズとヘッドライトで、写真で見ると青い。
これはUV加工とブラックライトを使い、光によって色が変わるという技術らしい。
パンアメリカーナスタイル・グリル(パンナメリカン)はGTにすでに採用されているもので、これが世に出ると最初はGTを乗っているような感覚になるはずだ。このグリルの名前は1952年メキシコ開催のカレラ パンアメリカーナ・メヒコという大会からきている。この大会で優勝した『300SL』のグリルデザインなのだ。
パワートレインは4気筒ガソリンとディーゼル。AMGの2.0リッター4気筒ターボもあるらしい。
http://autoweek.com/article/china-auto-show/mercedes-shanghai-concept-sedan-looks-sleeker-e-class
今までのライン主体のデザイン言語(1本の線でデザインする)も凄かった。
古めかしかったベンツのデザインが若々しいものとなり、シューティング・ブレークやSUVなど時代に合ったモデルの拡充が成功。
実はその分、欧州において「圧倒的な高級車」というイメージは崩れたのだが、それも意図したものだ。
そのまま「ベンツらしい」と言われるようになった今の哲学で突き進みそうなものを、あえて崩してくるデザインチームが凄い。
正直、フォルクスワーゲングループのように、次世代哲学を模索しながら、必ずしも輝かしい未来が見えてこないコンセプトがあるなか、ブランド力をさらに高めるような新哲学を打ち出したことは高級カーメイカーとしては変態的でもある。
BMWはあくまで保守的で、それをBMWたらしめているし、他のメーカーも新車種で新しいデザインを試みるだけで、全体の哲学はなかなか変えようとしない。
センシュアル・ピュリティという言葉は「ライン」時代にも使われていた言葉だ。
今回は線のエッジを減らし、面のプロポーションで魅せるという考え方へと大きく舵を切った。
つまり、センシュアル・ピュリティは二世代目に以降するということらしい。
ゴードンは今回「The time of creases is over(折り返しは終わった)」と語った。
あとは次々と二世代目センシュアル・ピュリティへと突き進むだけだ。
そして、パンアメリカーナスタイル・グリルは二世代目を象徴するグリルになる(Cクラスセダンですでに噂あり)。
上海の発表の様子はこちら