日本でもアバルトはよく見かけるけれど、モナコほどじゃない。
モナコにおけるアバルトのイメージというのは、他の世界のどこと比べても独特なものがあるはずだ。
「モータースポーツが好き」なはずのモナコの人々が、アバルトで暮らし、アバルトを足にして、日々この小さな車を操りたいと思うのは当然。
たぶん、新車はお金持ちの息子たちや30代くらいのビジネスマンが買って、あとは中古車が市場に溢れる。
路地裏だらけ、カーブだらけのモナコを走るための小さい車が欲しいけれど、レコードモンツァの音でサーキットのようにモナコを走りたい人々がアバルトを目指す。
日本では少し大人のセカンド・カーというイメージが強いけれど、モナコではもっとオモチャ感があるのだ。
高級車というよりは、改造もペイントもどんどんやって、個性を出した上でギャラリーの前に出る。そんな感じだ。
クルマ好きにも種類がある。スペック、機能にこだわり、詳しくなる人。一方で、ただ気持ちよく走りたい人。
つまり、スペックよりも雰囲気を重視する人。
そうなると、チンクエチェントでもいいじゃないかとなるのが他の国だけど、モナコだとアバルトの雰囲気が愛される。
それは、すぐ近くのトリノで生まれたアバルト社(フィアットもトリノ)と、同じ空気を感じているからかもしれない。
日本ではある程度の値段がするクルマだから、派手な改造はせずに大事に扱う。傷なんてもってのほか。
リセールのことも考える。
でも、モナコの人々はアバルトを「ゲタ車」として日常使いする。
暑い日には片腕を出して、バンバンとボディを叩いても問題ない。
その時計がボディに当たって小さな傷がついても。