デミオに安全性能が追加され、全車種で共通の安全性能体制に移行したとマツダは発表した。
これは、数年前から主張している「クルマの大きさによって差をつけない」という姿勢を貫いたものだったが、実際は今までに差は存在した。
たとえば、アクセラにはほとんどの安全性能があるのに、デミオやCX-3には車線逸脱に関するいくつかの性能がなかったり、ブレーキに関するものも差をつけていた。
今回のブレーキ追加機能は、対車両で約4~80km/h走行時、対歩行者で約10~80km/h走行時となったもの。今までは歩行者に対応せず、車両も30km/h以上は反応しないといった制限があった。
しかし、まだ差があるといえばある。車線逸脱に関してはデミオもCX-3もアクセラと同じになったが、MRCCというクルーズコントロールではCX-5が0kmまで対応するのに対して、他3車は30km/h以下は対応しない。
セーフティーサポートSの「ワイド」には関係しない部分なのだろう。
そもそも、明確な違いは「大きさ」であるアテンザ、アクセラ、デミオにおいて、どうして差をつけるのか。
今、人は大きさだけにお金を払わない。
大きいクルマを買わないとすべての機能が付かないという考え方は、完全に一昔前の考え方だ。
1000万円あっても1億あっても、コンパクトなクルマが欲しい人は欲しい。
なのに、コンパクトになると内装は手を抜かれ、値段は安くなり、安全性能といった先進機能は省かれる。
マツダは大きさによって差をつけないという基本的な考え方はあり、国産他社よりはだいぶその思想が貫かれてはいるが完全ではない。
安全性能がマツダ車で高まってきたときも、デミオとCX-3だけが取り残され、差がつけられていて、それが今回はだいぶ縮まった。
デミオはマツダの主力で最もコンスタントに売れているモデルであり、その理由は安さにある。
デミオ内最上級パッケージのインテリアの質感と値段がほぼ、いい意味でつり合わない。
それは、大きさで値段をつけるというやり方の限界を意味している。
性能、内装の統一化の提言
このゆがみの解決法は、各車種(アテンザ、アクセラ、デミオ)の中で性能、内装などを統一することだ。
すでに簡素インテリアと豪華インテリアというのが各車種内にあるが、そのレベルも各社共通にする。
つまり、豪華インテリアはたとえデミオの値段が高くなっても、アテンザからデミオまで差をつけない。
アテンザの簡素インテリアグレードは、ぐっと値段を下げて、デミオの簡素デザインと同じものにする。
簡素といっても、しっかり乗れるグレードで、輸入車によくある「絶対売らない」的なグレードではない。
また、「アテンザはマツダのプレミアムグレード」などという恥ずかしいことを言うのはやめて、「大きいワゴンとセダン」という意味だけにすればいい。
「そんなのは無理」という意見が自分の心の中からも聞こえてくるが、やはり今の状態は無理があるのだ。
アテンザやアクセラがデミオよりも先に出たために、高級といいつつ、デミオが一番今っぽいインテリアだ。
だが、センターコンソールあたりの作りがデミオは安っぽい。
それが購入を考える人には完全にマイナスになるので、デミオの中のグレードの高いものは、コンソールもしっかりと作る。値段は高くする。きっと売れる。
今もレザーパッケージという最上級グレードのコンソール以外の部分は驚くほど上等な作りで、同じセグメントのどの国産車にも輸入車にも匹敵するものはない。
現行ポロなどとは内装は本当に比べものにならない。(新型ポロは素晴らしい)
それなのに、デミオ内の下のグレードと値段に差があまりないため、正直、今のデミオなら驚くほどお得なのだ。
CX-3は逆に、インテリアをデミオより豪華にしているから、もっと下のグレードを作るべきだ。
幅をもたせることで絶対に売れるようになる。
デミオと室内空間は同じで、荷室と外見だけが大きいなんてギミックで高級化なんて、誰も納得しない。
デミオともアクセラともCX-5とも同じ立ち位置にして、同じようにグレードの差を作り、同じような値段にすればいいのだ。
何度も言うように、それならば各車種の最高級グレードは、高くしていい。
マツダの最高級が最高級エンジンではない
個人的に感じているエンジンフィールの具合を紹介しよう。
オススメモデル
アクセラ15XD ディーゼルがスポーツエンジンのように勇ましく感じられ、ディーゼルの嫌味がない。CX-5は大きくて回す気がしないし、アテンザディーゼルよりも気持ちがいい。
デミオ13S 静かに走ろうとすれば静か、回そうと思えばどこまでも滑らかにいい音とを出して回りきる。アクセラ15Sには残念ながらそれがない。マツダガソリンはディーゼルよりも気持ちよさ、音ともに良好。パワー、トルクで判断すればディーゼル(おそらくスポーツグレードという意味合いがあったはず)。
このように、エンジンフィールもマツダの意図に反していたりする。ちなみにデミオの13sガソリンエンジンは他の「スカイアクティブ」たる理由を省いたエンジンで、それが「気持ちいい」とは、「圧縮比を上げ、燃費性能を高めた」というスカイアクティブGエンジンの否定になっている気がする。
ともかく、大きいクルマをプレミアムとするには、無理がある。
そんなことをあれこれ考えていると、たしかにメルセデスAクラスも値段に大きく幅があるし、最上級AMGあたりはインテリアが本当に素晴らしい。
心配なのはボルボだ。グレード内にはマツダ同様、幅がなく、大きさで値段とグレードに差をつけている。
さらに、V40からV90(もしくはXC90からXC40)までの値段差も開きすぎている。完全に「大きいクルマはプレミアム」という考え方で、インテリア、エクステリアは海外でも非常に評判が高い。エクステリアに関してはXC90からXC60に新デザインがおりてきたときまで、差がなくてよかったが、XC40で一気に落とした。
小さいXC40は、安く売りたいし、安く売るだけの理由が欲しいから、安いデザインにしたのだ。
間違いなく、XC60以上を高級に見せるための安いデザインだった。正直、本当に失望した。
これなら、V90のデザインも、V40におりてくるころには、「V90を高級にみせるための安いデザイン」が仕上がってくるだろう。今のV40が素晴らしいだけに、そんなものは絶対に買わない。
一方、フィアットやBMW、MINIならば、その点は素晴らしい。
小さなチンクはデザインに堂々としたものがあるし、500L(日本未発売)という大きいクラスになっても同じデザインで統一している。
さらに、スポーツモデルであるアバルトがあるので、同じチンクの大きさで高級モデルも楽しめる。
MINIも大きなクラブマンやクロスオーバーがあっても、小さいカブリオレと内装に差がない。
マツダはそれを見倣い、クラスを整理したい。
まず、ハッチバックを
アクセラ、デミオに絞る。
SUVは
CX-8、CX-5、CX-3
カブリオレは
ロードスター
ハッチバックの中や、SUVの中で、インテリアに差をつけない。CX-3にも、CX-8の一番上と同じグレードがあるようにする。
アテンザはまったく違う車種にする。
FRスポーツでもいいし、今のようにセダンにして、デザインはハッチバックと違うものにする。
そうすれば、ハッチバックと違う価値観で値段を設定できるし、プレミアムクラスと宣言してもいい。
チンクはチンクありきで、そこからアバルト、500L、500Xと拡がっている。
ハッチバックもデミオありきにして、デミオのデザインをもとに、それの大きなデミオLとしてのアクセラというのも面白い。
ならば、デミオという名前を廃止して、アクセラとアクセラL的な感じにしたっていい。
いずれにしろ、明確なスポーツクラスを設定して、そこを高級化してもいい。
そんな話ができるのも、そもそもマツダがデザインを統一しているからだ。
スバルやスズキ、ホンダやトヨタでそんな話はできない。