車がまっすぐ走り、まっすぐ止まれば運転としてはいい。道路を車線に従いまっすぐ走り、フラフラしない。
人もメーカーも、そんな車と運転を良しとしてきた。
そして都市で運転する限り、ハンドルをなるべく動かさず、曲がるときも一定のハンドリングで滑らかにカーブして…。
いい車を追い求めて、いい道路環境を追い求めて、少なくとも東京ではそうなった。
曲がりくねった道は少なくなったし、ハンドルをそれほど動かす必要がない。
大きい車ならなおさらそうだ。
素直に楽しいと思う車として、個人的にコペンとロードスターを挙げる。
世代に関わらず、この車は楽しいと思うがなぜか。
その理由のひとつに、「ハンドルを回したくなる」という魅力があると思う。
特にコペンは横幅が小さいせいか、一車線の道路でも余裕がある。切れば切っただけノーズが動き、かといって切ったからなにかにぶつかるわけでもない。小さいから。無駄にキュッ、クルッとハンドルを回せるのは、楽しい。
低速でもいい。曲がりくねったキャンプ場の道を走れば楽しいように、ハンドルを右に左に切れると楽しい。
コペンはそれを、いつもの都市の道路で可能にしてくれる。
ロードスターも世代にかかわらずそういう魅力がある。たとえばNDロードスターは、他のマツダ車に比べて無駄にハンドルを切りたくなる気分にさせてくれる。横幅はコペンよりもあるし、軽いといってもコペンより重い。ガソリンのデミオと同じくらいだが、デミオにはなぜかロードスターほどハンドルを右左にいじりたくなる衝動は湧かない。
これは車のコンセプトが人に与えるメッセージによるものなのかもしれない。
「無駄にハンドル動かしてもいいよ」というスポーティさ、解放感みたいなものがそうさせる。
誰もアクセラやCX5でそれをやろうとは思わないし、そんなことすれば同乗者が車酔いする。
回したくないと思う車は、高重心で、重いという車だ。SUVもバスも、大きな重い車もハンドルを右に左に切りたいと思わない。
回したい現行車は、コペン、ロードスター、アバルト、MINI、パンダあたり。S660はなぜかそんな気持ちにならなかった。でもまた乗ると違うかもしれない。新しいジムニーやスイフトにもそんな雰囲気がある。
また、同じようなことをしているのは、タイヤを温めようと右左にクイックに動くF1カーと、小さなレース場を走るゴーカートだ。
「走る」ことを歓びとすることにコンセプトを置くメーカーは多いが、そういうわけで、社会全体と車の性能的な意味合いでハンドルを切りたいと思わせなくなってきている。
そのうち、ハンドルを右左に切ってノーズをクイックに動かすなんて、誰もしなければ、誰も求めなくなるのかもしれない。
もしあなたがコンパクトカーに乗っていてハンドルをくいくいやったことがないならば、安全な道で試してみてほしい。回しても全然ノーズの向きが変わらないような車もあるけれど、たいてい楽しい。
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