V型3気筒ターボの音が聞けるぞ
ホンダがEICMA 2025(ミラノショー)で「V3R 900 E-Compressor Prototype」を世界初公開しました。排気量900ccの75度V型3気筒に“電子制御コンプレッサー”を組み合わせた、まったく新しいパワーユニットを採用しています。公式ティーザー映像も同時公開され、独特の鼓動感あるサウンドが確認できます。 (Honda Global)

どんなバイク?――キーワードは「Non-Rail Roller Coaster」
開発コンセプトは“Non-Rail Roller Coaster”。最先端技術とこれまでの開発ノウハウを融合し、「保証されたスリル」と「安心感」を両立させる狙いだと説明されています。カウルは左右非対称の大胆な造形で、タンクには来年以降フラッグシップに順次採用予定の新しい「Honda Flagship WING」エンブレムが装着されています。市販化に向けた開発を継続する旨も明記されました。まるで魔改造の夜みたいに楽しそうに開発しているのか???
技術トピック:V3×電子制御コンプレッサーの狙い
- 水冷75度V3レイアウトの900ccエンジンに、世界初の“電子制御コンプレッサー”を二輪向けに採用しています。エンジン回転に依存せず吸気圧をコントロールできるため、低回転から高いレスポンスでトルクを立ち上げる思想です。
- 目標性能は「1200ccクラスに匹敵」。同時に環境性能にも配慮する、としています。V3のコンパクトさを活かし、スリムで取り回しやすい車体づくりも狙っているようです。
デザインと細部
左右非対称のサイドカウルや新エンブレムに加え、ネイキッド然とした骨太なシルエットが印象的です。公式動画では単気筒や270度パラツインを想起させる“ドコドコ感”に近い独特の排気音も確認でき、既存の直4・V4とは違うキャラクターが感じられます。

位置づけとラインアップの中での役割
同じEICMA 2025で、ホンダは新型CB1000GTやEV「WN7」、E-Clutchの拡充なども発表しています。V3Rはその中で“技術の挑戦”を象徴する存在として披露され、将来の量産化を見据えたプロトタイプという立ち位置です。
V3というレイアウトは二輪では極めて珍しく、車体の細さ・マス集中・独自の鼓動感など、“既存ジャンルのどれでもない楽しさ”を作れる可能性があります。電子制御コンプレッサーは電動スーパーチャージャー的な思想で、街中の低回転域から峠の立ち上がりまで“待たされない加速”を狙えるはずです。
一方で、実走の熱マネジメント、過給制御の滑らかさ、吸排気音規制やコストなど、量産フェーズでの落とし込みは注視したいポイントです。仕様詳細(出力・重量・電子制御の具体項目など)はまだ非公開なので、今後の続報に期待します。
というわけで、ついにプロトタイプ公開されました。何度もお伝えしてきたとおり、エンジンはトルクの出る回転数を決めなくてはいけません。高くすれば高い回転数でトルクが出て、回転数に伴って高い馬力が出ます。その分、低回転、つまり発進回転数域でのトルクを犠牲にします。その場合、レビューで「街乗りのパワーがない」「楽しさがない」という結果になります。ですが、トルクを低回転域にすると、馬力が出ないので、最高速度も出なくなります。日本では長らく高回転型のバイクを製造し続けてきました。
車の世界ではその欠点を補うためにターボを開発しました。自然吸気では爆発が最大になる吸気のタイミングがあり、そこで最大トルクになります。それをトルクのない回転域で、空気を押し込んで擬似最大トルクにするわけです。
ホンダはその圧縮された空気の押し込みを、電動でやります。だから、自由自在にトルクを最大にできる可能性があるということです。これが成功すれば、ゲームチェンジャーになる可能性を秘めています。このV3R 900 E-Compressorに乗ると、一気に他のバイクが面白くなくなる。なんてこともあったりして。
また、バイクの世界ではこの低回転域でのトルクの無さを補うために、大排気量化してきました。1200ccもあれば、高回転域に最大トルクを設定しても、低回転域でも十分モリモリなわけです。ですが、このホンダの電動圧縮技術があれば、900ccくらいで楽しくなるというわけです。








