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W800 新カラー所感:白で際立ち、青で沈む。色だけで“らしさ”を更新する2026のダブハチ


カワサキ W800が新カラーで登場した。ボディはそのまま、仕立てを変える。今回は「パールクリスタルホワイト」と「メタリックディープブルー」の2色。国内の発売予定日は2025年11月1日、価格は税込1,309,000円。ここ数年は渋めの単色系が続いたが、今回は“明度の白”と“彩度を落とした深い青”を両極に据え、同じWでもまとう空気をがらりと変えてきた。


ホワイトはクロームとの相性が抜群だ。フェンダーや灯具のメッキが一段と立ち、昼の光を拾って輪郭がはっきりする。洗って、拭いて、磨く——手入れの楽しみまで含めて完結する色。写真では軽やかだが、実車は金属の面がしっかり見える“白の重み”がある。
一方のディープブルーは、落ち着いた夜のトーン。タンク上面の細いストライプが効いていて、視線をすっと水平に流してくれる。日陰やガレージで眺めると、メッキのハイライトだけがふっと浮く。白が「明るく見せる色」なら、青は「沈めて素材感を聴かせる色」だ。

メカの更新はない。空冷773ccのバーチカルツインが、相変わらず“等間隔の鼓動”で日常域を気持ちよくつないでいく。40〜60km/hで流す時間にこそご機嫌な回転の上がり方、フロント19/リア18インチのワイヤースポークがつくる穏やかな舵感。加速で驚かせるタイプではないし、高速巡航で余力を主張するわけでもない。けれど、今の交通の流れと暮らしに合った速度域で、きちんと“気分を上げてくれる”——その軸は不変だ。

W800の一番の満足は“見て触れて、所有する喜び”。エンジンの造形とメッキの質、金属の肌理。磨くと違いが出るモノは、所有体験まで含めてバイクを豊かにする。走りは“急かさない力感”。信号の多い街でも扱いやすく、低中速の厚みでゆったり行ける。一方で、高速長距離は別の選択肢を推す声もある。弱点としては絶対的パワーの控えめさや振動、そして屋外保管のサビ対策。だが、それらを“味と手入れのセット”として受け入れているのがWオーナーらしい。

では、どちらの色を選ぶか。屋外保管が多く、手入れは最小限にしたいなら青が楽だし、週末の手入れを儀式のように楽しむなら白は格別だ。白は晴天で映え、青は夕景や夜の街に似合う。結局はW800をどう時間に馴染ませるか、という話。スペックで競わない、生活の速度に寄り添うトラディショナル——今回の新色は、その世界観をもう一度はっきり見せたと思う。



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