GBという名が再び高回転域へ——。ここ数カ月、各国のメディアが一斉に「GB500」の名を報じはじめ、噂話の域を明らかに超えた。起点は商標だ。米国で2024年11月12日に「GB500」の出願が確認され、その後、欧州やオセアニアでも動きが拾われた。さらに2025年に入って登録まで進んだ地域があるという報も重なる。複数の市場で同時に名称を押さえるというのは、単なる“箔付け”ではない。プロダクトに落とす前提の準備行為——読者がそう直感してしまうのも無理はない。
GBという二文字が、ここにきて急に現実味を帯びてきた。火種は商標の動きだ。海外で「GB500」の名称が相次いで出願され、地域によっては登録まで進んだという報。名称を押さえること自体は発売の確約ではないが、複数地域で同時に進むと、読む側の体感は一段変わる。あの落ち着いたクラシックロードスターに、上位版が加わるかもしれない。Webike(ウェビック)では今年の秋までに出るのでは? という記事を公開した。

読者から届くのは「もう確定じゃないの?」という声だ。商標の連鎖に、専門メディアの継続的なフォローが重なり、過去の例ではこのあと大型ショー前後に一気に公表へ、という筋書きが何度もあった。とはいえ冷静に並べれば、決定打はまだ三つ揃っていない。型式認証データベースの掲載。保安部品を付けた公道テスト車のスパイショット。メーカー自身のティザーやプレスリリース。このどれかが出た瞬間に温度はさらに跳ね上がるが、現時点では“強い青信号”というのが正確だろう。
では、もし出るならどんなGB500か。最大公約数は、現行GB350の文法を受け継いだ上級ネオクラ。軽さと素直さを残しながら、500という排気量がもたらす余裕をどう料理するかが見どころだ。外装はただの拡大コピーではなく、タンクやサイドカバー、シートのあしらいに差別化が入るはず。市場投入の順番は、500cc帯が厚い海外先行、日本はその流れを見て、というのが現実的な見立てだ。Webikeの記事では、350の改良版もしくは新設計で、デザインも異なるという。正直、350が大型バイクと同じサイズで、エンジンの外径もすでに大きいため、レブルのようにそのまま500ccで出すのではと見ていたが、どうも要するに、力を入れているかもしれない。
一番の論点はエンジン形式だろう。単気筒か、2気筒か。結論からいえば、単気筒優勢。圧倒的に。
GB350は空冷単気筒で、設計に排気量拡大を見越した余裕があると分析されてきた。同系統での500化なら、設計もコストも道筋が描きやすい。さらに商品性。ネオクラの文法において、単気筒は鼓動感と軽快感、そして価格の妙味を立てやすい。もし並列2気筒を選ぶなら、兄弟モデルとの棲み分けや価格帯の整理、名称の位置づけまで含めて再設計が必要になる。どちらの道にも理屈はあるが、まずは“GBらしさ”を太らせる単気筒で始める方が自然、という空気感が強い。350のエンジンは単気筒ながら、単気筒らしい雑な振動(要らないやつ)がなく、二気筒のように上質な爆発を感じられること。レブルのエンジンと比べると、2ランクも3ランクも上質に感じられる。
この、単気筒の進化版を500でもぜひ味わいたい。
車体まわりはどうだろう。500化で必要になるのは、エンジンの出力余裕に見合う足まわりの最適化だ。フォークのセット、ブレーキの容量、スイングアームやリンクの見直し。数字を誇るより、日常域での気持ちよさを磨く方向が似合う。排気系の取り回しやタイヤサイズに“差し替えの痕跡”が出始めれば、いよいよ目撃情報が確度を持ち始める。そうなれば、写真一枚で状況が動くのもこの世界の常だ。
読者の期待をもう少し掘り下げると、GB500に求められているのは、速さの更新ではなく、味の増幅だとわかる。静かで上質な鼓動。ひとひらのトルクでスッと前に出る感覚。体を委ねても怖くない車体の素直さ。そのまま背伸びせず、でもワンサイズ余裕がある——それが日々の距離と気持ちを伸ばしてくれる。数字で測れない“上質さ”を、500という排気量がどこまで後押しできるか。そこにこの復活劇のテーマがある。
一方で、発売が“確定”と言い切れない理由もはっきりしている。商標はあくまで名称の権利確保。メーカーの最終判断は、原価と価格、環境規制の見通し、生産キャパや販売計画といった現実のテーブルの上で下される。魅力的でも、タイミングを一つ読み違えると数字が合わない。だから、最後の一手までは静かに準備が進む。今はまさにその段階だ。
編集部の暫定結論はこうだ。来る可能性は高い。地域をまたいだ商標の動き、専門メディアの一貫したフォロー、そして市場側の“待ち構え”が揃っている。次の数歩はわかりやすい。型式認証に名前が現れる。公道テスト車が撮られる。ティザーが一本出る。そのどれか一つで、空気は確実に変わる。GBという名に込められた単気筒の矜持と、現代の500ccに求められる実用幅。その交点でホンダが選ぶ解を、わくわくしながら待つ。それが今の正しい距離感だと思う。

検証 GB500の噂は本当か
噂がここまで熱を帯びる背景には、媒体側の“状況証拠”の積み上げもある。スクープ常連の国内誌は、現行GB350の設計やヘッド周辺のマージンから「上位排気量を見越した作り」を示唆してきた。実測に基づく技術的読み物に、海外メディアの出願情報が重なれば、読者としては「もう確定でしょ?」と言いたくもなる。実際、欧州では2025年3月19日付で登録日時が記されたデータの存在が報じられ、北米の出願は審査継続中という整理まで出ている。業界がこういう温度になるのは、発売が近いときの典型的な前兆だ。
もちろん、「商標=発売決定」ではない。決定打は三つ、型式認証の掲載、保安部品を備えたテスト車の目撃(いわゆるスパイショット)、そしてメーカーの公式ティザー/リリースだ。この三点が揃えば一気に“確度A”に跳ね上がる。とはいえ、過去の新型でも、商標が各地域で広がったあとに大型ショー前後で一気に公表へ——というのは何度も見た筋書き。今回も同じ流れを期待したくなる。海外大手誌も「米国向けレトロロードスター計画」と表現しつつ、細部は未確定という姿勢で追い続けている。
では、もしGB500が“来る”として、どんな像になるのか。まずパッケージは、GB350の文法を受け継いだネオクラシックの上級版、というのが最大公約数だ。外装は単なる拡大コピーではなく、上級機にふさわしい差別化(タンク形状やサイドカバー、シートの造作など)を予想する向きが多い。市場投入の順番は、500cc帯の需要が厚い海外先行、日本はその後——という読みが現実的だろう。欧州や北米、オセアニアの出願・登録が先に動いていること自体、そうしたプライオリティを示唆している。


