日本の自動車メーカーが北米に依存を深め、トランプの意向に怯えているのに対し、ホンダが真逆の姿勢をとっている。
年明けに倉石誠司副社長が発表した「日本に注力する」という姿勢を「JAPAN first」http://asia.nikkei.com/Business/Companies/Honda-puts-Japan-Firstという題名でASIAN REVIEWが記事にしている。
15年6月に社長に就任した八郷隆広社長の改革。「チームホンダ」は、各チームのバランスを的確にしていくというもの。
能力のあるトッププレイヤーに各部署を任せるオールスター方式が上手くいかなかったため、チームの末端にまで仕事と責任を分配していく方式に変えていく。
それが今年ファイナル・ステージに入っていくという。
「従業員はこの改革の狙いを理解すべきであり、チームとして能力を向上させるべき」と社長は語っていて、日本にいるチームを育てるために日本に注力するという考え方を持っている。まるでホンダのF1チームのようであり、少数精鋭でやっていくという姿勢でもある。
グローバルにいくか、ドメスティックにいくかは判断の分かれるところであり、自動車会社も悩ましいところだが、世界を見据えたジャパン・ファーストの姿勢は面白いとも言える。(提携できるメーカーがもう地球上に存在しないという批判もある)
スズキのような日本とインドしか見ない上でドメスティックなのは正解とは言えないし、北米シビックを日本に導入するというのはいい判断だとも思う。
ホンダはクローズド・イノベーション方式を採用し、積極的にグローバルな協力体制を敷くオープン・イノベーションを採らないことにしたのだ。
何を自社開発すべきか、それを八郷体制は見極め、整理をほぼ終えようとしている。
また、トランプ体制に対しても恐れる必要はない。アメリカで販売される車の70パーセントがすでに米国生産だからだ。現地生産車ではフォードに次ぐ第二位。雇用は現地3万人で、投資家もその体制を評価している。
ホンダはオデッセイが北米で売れてから方向性がぶれていった。
居住スペースの大きさにこだわり、「家族」にこだわりすぎた。
それはそれでいいし、オデッセイは馬鹿売れしたからいいのだけれど、クルマはそれだけじゃない。
70年代、80年代に「シンプル、小さい」で尊敬を集めたホンダはもうアメリカにはいない。
しかし、「大きい」のこだわりを保持しつつ、去年はNSXが出たし、シビックタイプRもある。日本にはS660もある。
また、AIではソフトバンクと提携し、「感情エンジン」の開発にも取り組んでいる。
ガラケーの二の舞はごめんだが、グローバルを見据えて独自のOSを開発していくのは正しい。
これから自動車会社は、独自のOSを持つことが使命ともなっていて、PCの世界にBasic、ウィンドウズ、MacOSという歴史があったように、操作することの実用性や楽しさを追求していかなくてはならない。
テスラに先を越されている場合ではないのだ。
また、実用面、実際の実力を重視する北米で強く評価されているのが日本メーカーであり、ホンダもそういった面の評価は非常に高い。
一方、欧州車はデザイン面で優位だが、実用面で大きく遅れをとる。その両方を採ろうとしているのが韓国勢だ。
新型プリウスは北米で「持つのが恥ずかしい」とさえ酷評されているが、シビックは「持つのが誇らしい」。
そしてホンダは、進むべき道をまだ定めていない。