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SR400のエンジンには「セオリー崩し」がある

ロングストロークについて調べていると、SR500とSR400の話が面白くて仕方ありません。

最初は単純にSR500が重いフライホイールでSR400はショートで…と考えていましたが、そう単純ではありませんでした。

たとえば、TX500を基本として開発された二つのバイクですが、最初はどちらも重いフライホイールを採用しました。

1978年に同時発売されましたが、ボアストロークに違いが出たのは、エンジン全体の長さをそのままにしたまま、400のコンロッドを長くすることで排気量を変えたからです。

なので、二つのバイクのボアは共通の87mm。500のストロークが84mmでTX500のままですが、400は67.2mmになったのです。

本来であれば、400はコンロッドも短くしてエンジンの全長も短くしたいところですが、そのままにすることで開発コストを下げました。その変わり、長くしてもクランクピンの軸はセンターに寄るので、回すのにパワーが必要となります。外側からの見た目はロングストロークなのに、やはりショートの特性があるのです。

面白いのは、最初はどちらも重たいクランクを採用したこと。TX500より800gも重くしたそうです。

これでSR500はロングストローク、重いフライホイールから来る乗りやすいバイクに仕上がったはず。

そして、400も重たいフライホイールを一旦回せば快適ですが、そのためにトルクを低回転型にするのは必須です。

しかし、初期型はなんと6500rpmで最大トルクの出る設定に。

クランクピンの位置からいっても、大きなトルクが発進時に必要なのに、どうして高回転よりのトルク設定にしたのでしょうか。

しかも、1年後に500は軽いフライに戻し、400はそのまま重いフライという、不思議な組み合わせになりました。

SR500はただでさえビッグシングルで、振動が5000rpmから不快になると言われていたので、フライホイールを軽くすることで解決しようとしたのでしょう。

400はストロークが短い分、少し回せるのと、排気量が小さい分、少し振動はおだやか。

ですが、「ショートに重いフライ」という、一般的なセオリーからは外れた組み合わせになりました。

高回転でもパワーが出るように、ショートらしく馬力を犠牲にしていないのですが、重いフライは「レスポンスが悪い」という評価も受けます。いい言葉なら、「粘りがある」と評価されます。

この重いフライを、少ない低速トルクで回せるのか。

それがSR400の味だったり、運転の肝になったのかもしれません。ですが、最終型では最大トルクを3000rpmにし、「ロングストロークに重いフライ」的な味付けに変わりました。

なので、SR400は今、まるでロングストロークのような味わいなのです。

想像すると、最終型のSR400は初心者でも運転しやすいはず。

初代は、どんな感じでしょう?

低速トルクがないので、ある程度回さないとダメかもしれません。

もし、SR400のイメージを持って、今の人が初期型に乗ると、うまくのれないのです。

「あれ? 発進から40km/hくらいまでが、うまく走れない!」

となる可能性が高いです。

SRが発売されて1年後。それぞれ、道は分かれました。

SR500のエンジンはフライを軽くしたおかげで、吹け上がりがよくなりました。

「もっさり」感から解放されたのです。

しかし、古いヴィンテージのトライアンフのような味わいは消えました。

初代SR400は1次振動がショートらしく、少し穏やか。

6000rpmくらいなんとか回せます。

でも、重いフライでレスポンスはもっさり。5000rpmくらいでトルクは使い切り、あとは息切れします。

となると、やぱり重いフライって、ショートだろうがロングだろうが、息切れさせるんだなぁということです。

そして、この設定における最大のデメリットとして予想できるのは、燃費の悪さです。

SR500はロングですが、400はショート。それだけでまず燃費が悪い。

重いフライを回すために回転数が必要ですから、それも燃費に悪い。

というのが予想できます。

最終型は低回転トルクにしたことで、その問題はある程度解決していると思うのですが、どうでしょうか。

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