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サーフボードに乗るように。

高校生でMTX50というモトクロスバイクに出会って以来、モータースポーツ好きにはなったが、やがてウィンドサーフィンやサーフィンに出会い、車やバイクから離れていた時期があった。

両者は違うものだと、私ははっきりと認識していたのだ。

 

サーフィンは確かに凄い。裸になって海の温度を感じながら、生の喜び、死の恐怖とともに波を待つ。

サーフボードが突然加速しはじめるあの感覚は、もうどうしようもないのだ。快感として。

 

沖縄の南部、摩文仁というサーフスポットの海まで車で数十分のところに住んでいた私は、ほぼ毎朝海に通っていた。

嵐でもないかぎり、とにかく通った。

朝陽を見ながら波を待つ時間というのは、今思えばとんでもなく幸せなもので、一生続くことがないのもなんとなく感じていた。

実際、東京に移った私は二度とサーフィンをやらなかった。

 

電車生活の中で、私は自転車と歩きに親しむようになった。超エコな移動手段で、健康的。

車を持たず、スポーツもほぼやらない。

何の不満もなかった。

 

子どもができて、家族の問題として車という選択肢を選んだ。

まったく興味なかったのに、買ったら毎日乗りたいと思うようになった。エンジンをかけるのがとにかく嬉しい。

 

今もただのコンパクトカーなのに、乗ると嬉しい。

目的もなく、昼に5分ほど家のまわりの広い道を走るだけで、楽しい。

たいていは、どこに何かを買いに行くとか、誰かを迎えに行くという目的があって車を使う。

ロードスターやスポーツカーなら、ただ走るために車を出すが、それ以来の車はたいていが目的を伴う。

すると、「目的地に早く到達する」という目標が一番前に出てきて、走る歓びはスポイルされてしまう。

サーフィンには、「目的地まで乗る」ということは一切ない。

 

たとえスポーツカーじゃなくても、目的地を設定しなければ、もっと楽しめる。

車で風と加速を感じるのは、サーフィンの歓びと同じなのだと認識すれば、さらにもっと楽しめる。

 

遠い昔にやめてしまったサーフィンだけども、目的地のないドライブは、サーフィンと同じなのだと、今日から考えることにする。

今一番楽しいのは、車に乗ること。

それは間違いない。

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