アンドレ・ロテラーが乗る1984年のアウディスポルト(スポーツ)クワトロの話。映像に映る美しい海辺の景色はモナコだ。
彼はモータースポーツのファミリーに生まれた。父親はアウディのラリーカーチームを持っていて、マネージャーとしてベルギーで活躍していたため、小さなころからアウディを観て育った。
チームが使っていたロングホイールベースのクワトロAは素晴らしく、アンドレはその5気筒サウンドが特に好きだった。「多くの人々が愛するアイコニックな車だった」。その後レーシングカートに乗るようになった彼は、ルマンで3度の優勝を経験する。
そのときの車もアウディだったが、今も毎日アウディに乗っている。それが1984年のアウディスポルトだ。人目では何の車なのかわからない人のほうが多くなったが、1984年ごろのラリー界で注目されたのがこの車だった。
1984年ごろ、WRCラリーのカテゴリーBでプジョーやフォードと戦っていたクワトロは、常にトップレベルをキープしていた。
4駆やABS、セルフロッキング・ディファレンシャルといった技術は当時最先端のテクノロジーで、それがすべて詰まっていたのだった。
デザインで特長的なのは大きなグリルに加え、ボンネットとバンパーにあるインテイク。これによってラジエーターとオイル・クーラーを冷やし、戦える車になった。ボディサイズは全長4,160mm×全幅1,800mm×全高1,340mm。1980年に開発されたUrクワトロよりもホイールベースは320mmほど短く、2200mm。
重さは1トンと軽く、2,133cc直5DOHC20Vターボは最高出力306psというモンスター。
さて、このホットハッチは世界で214台と、数が少ない。それは、WRCで勝つために作られ、ホモロゲーション取得のために製造したからだ。
その後1985年にさらに競技用のS1が開発され、真のアイコンとなっていく。
ちなみに、1984型は米国では販売されたことがないため、オークションでは5000万円付近の値がつく。