レブル250の2020年から搭載された「アシストスリッパークラッチ」。「クラッチが軽くなる」という情報が多いけれども、「リアの挙動を…」みたいな話もあります。そしてNinja250(※2020年9月発売のZX-25R SE)に搭載されたクイックシフター。いったい何が違うのか検証してみます。
まず、ホンダのアシストスリッパークラッチ。これが開発されたのは、「シフトダウン時の挙動を改善するため」だったようです。
シフトダウンするときに、エンジンの回転速度に比べて、タイヤ、ホイールがもっと速く回っているとします。
ギアを下げてクラッチをぱっと離すと、それぞれのクラッチ板の回転速度が合っていないので、エンジンブレーキがかかります。するとロックしてしまうので、ライダーはクラッチをゆっくり離したり、アクセルを少し開けたりして対応(ブリッピング)します。
アシストスリッパークラッチは、ここで活躍します。
まず、それぞれのクラッチ板は斜めの溝があり、ホイールの速度が速いときは力を逃してくれます。
しかし、実際に乗ってみるとエンジンブレーキはしっかりかかります。それほど意識しなくていいくらいの設定になっていて、「ロックはさせない」ということのようです。
次に、クラッチが軽くなる理由ですが、さきほどの斜めの溝は、加速時にがっちり噛み合うようになっています。なので、従来のようにスプリングでがっつりクラッチ板をおさえつける必要がなくなりました。
握ることで物理的にクラッチ板を離しているのですが、この力が弱くてもよくなったわけです。
それで半クラができなくなるというわけでもなく、弱い力でホールドができます。
Ninja250はこのアシストスリッパークラッチを2014年モデルから採用していますが、2019年からSEというモデルに採用されたものはもっと凄いです。名称はカワサキクイックシフター(KQS)。※2020年9月発売のZX-25Rはオプション。SEは標準装備。
これはまた全然違うもので、
クラッチを握らずにシフトアップ・ダウンができます。
クラッチを握るのはローギアに入れるときだけ。
あとは電子制御でノークラッチシフトアップが実現します。本来であればアクセルを戻してから上げるか、クラッチをしっかり切ってアクセルを戻して上げるかですが、このクイックシフター場合はシフトアップをセンサーが感知して燃料の供給を止めます(フュエルカット、燃料カット)。
これがアクセルを戻したのと同じ状況になるというわけです。
これがNinjaはシフトダウン時にも対応し、ブリッピングもオートになっています。
クイックシフターがアップダウン両方に対応しているのは大型車ではどんどん始まっていて、ホンダもCB1000Rなどに採用されています。Ninja250のライバルCBR250RRにもオプション採用されました。
ちなみに、スズキはGSX-R1000RABSにアップダウン対応のクイックシフターが搭載。カワサキはH2、ZX-10RRなどに採用されています。ヤマハはシフトアップ時のみの対応がメインになっています。
同時に、オートマとも言えるデュアルクラッチも普及が始まっているので、どちらが指示されるのかはまだまだわかりません。
こちらは2019’CB650R/CBR650Rに対応した後付けクイックシフター。アップ、ダウンに対応していて、オートブリップ機能もあり。取り付け時間は0.7時間です。純正価格は税込2万5300円。アフリカツインにも同様のものがありますが、6万円以上します。社外シフターもあるようですが、基本はアップのみで、燃料カットではなく点火カットのようです。
クイックシフターでシフトダウンすると、一応スロットルオフにしてクラッチを握らずに左足をくいっとやるわけですが、ショックがないということです。オートブリップなので、すべて電子制御でやってくれます。
これはもしかしたらクラッチを握る従来の方法よりも自然な動きかもしれないですね…(異論ありますが)。オートマ四輪車ではたとえば自分で何速かを決めるマニュアルモードがありますが、シフトダウンは勝手にやってくれます。シフトアップだけに集中する感じです。これが結構楽です。