Column

2017新型CX-5ディーゼルで一番気になったこと。

 

新型CX-5を360°動画撮影で試乗してきた。驚きだったのは、内装の質感アップではない。

エンジン音だ。

初代CX-5から続くマツダディーゼルエンジンのサウンドは、心地よいガソリンエンジンのサウンドとフィーリングに慣れた人にとっては耳障りなものだった。

ガラガラという音は昔のディーゼルエンジンと変わらなかったし、回転数を上げて楽しいという思いには至らない。

それが、新型CX-5になって、ほぼ「ガラガラ」しなくなった。

少しずつ改良を重ねてきたので、すべてを知っている人にはわずかな変化かもしれないが、初代CX-5に乗っていた人が比べると、その差はディーゼル音からガソリン音になったくらい激しい。

ディーゼル音の改良はナチュラル・サウンド・スムーザーという仕組みから大きく変化してきた。特に、2016年のアクセラディーゼルはナチュラル・サウンド・周波数コントロールも加わり、「心地よい」レベルにまで変化した。静かになっただけではなく、踏めば荒々しいスポーツカーのサウンドにもなる。このエンジンのファンが出来てもおかしくないような出来で、ボルボディーゼルもBMWディーゼルも、マツダと比べられると勝負にならない。

アクセラから新型CX-5までのエンジンに、大きな改良はない。だが、遮音材や制振材の最適化、車の大きさや応答性の向上などが効いて、そのフィーリングはガソリン並になった。





マツダのガソリンエンジンのフィーリングは素晴らしい。普段は静かだが、踏めばしっかり唸ってくれる。その振動は心地よく、小排気量であれば街中でぐっと踏んでも法定速度内で楽しめる。応答性はノンターボ自然吸気でディーゼルターボよりもいい。こんなに楽しいエンジンを持っているのに、マツダは広告展開ではほぼ、自社のガソリンエンジンを無視してきた。ディーゼル押し一辺倒だったのだ。

ディーゼルエンジンはスカイアクティブという新技術群の目玉として売り出され、今ではスカイアクティブ=クリーンディーゼルエンジンと思っている人は多い。

だが、VWのディーゼルゲートで煤問題は注目され、ディーゼルの問題が注目されてからはディーゼルをネガティブに捉える人は多くなっている。

マツダのエンジン性能は欧州勢とは違うというのは事実だが、結局は度重なるリコールでオーナーたちを裏切ってきた。

実際にデミオとCX-3のディーゼルの売り上げが伸びず、マツダは方向性を「バランス型」に変更しようとしている。CX-3はガソリンモデルがなかったから、今年追加されるかもしれない。

そもそも最初に打ち出されたスカイアクティブエンジンはガソリンエンジンだった。それが何故、ディーゼル一辺倒になったのか。

 

 

発展途上だったディーゼルと安定感を増していたガソリン

2011年6月、デミオに搭載されたのは圧縮比14という常識を覆す数値(量産ガソリンエンジン世界最高)で30km/L(10・15モード)を達成。当時、同じクラスのハイブリッド車と同じ燃費で、内燃機関の可能性を著しく拡げたのだった。マツダはこのままガソリンエンジン押しで行くのかと思いきや、ディーゼルエンジンをCX-5のメインとして打ち出してきた。

発表会は2012年2月。デミオから半年と少しを過ぎたころだ。当時、日本ではディーゼルがまったく人気がなく、注目がされていない時代。しかし、当時の社長山内孝は「新たな市場を創造いたします。社運を駆けております」と胸をはった。

今度は「世界一の低圧縮比」で、トルクがあり、燃費もいい。ディーゼルの課題だったPM2.5の問題もクリア。欧州並みの「クリーンディーゼル」として日本市場を開拓しようとしたのだ。

結果は大成功で、ディーゼルは売れた。

そこからディーゼル優位の姿勢をマツダは採った。ガソリンも高圧縮でスカイアクティブ技術であるのに、ディーゼルだけを喧伝し続けた。ユーザーや評論家はたびたびマツダのガソリンエンジンを褒めているのに、マツダはディーゼルの広告ばかり打つ。

外側の人が思うのは、「スカイアクティブのガソリンもディーゼルも素晴らしい」だ。ガソリンはフィーリングが素晴らしいし、燃費もいい。ディーゼルはトルクが購買欲をそそるし、燃費もよく燃料費も安い。だから、ガソリンもディーゼルも同じ立場にすればいいのに、ディーゼルのグレードをガソリンよりも高くするという設定を今も続けている。あくまでもエンジンを中心に置いているのだ。

エンジンを主役にするならば、エンジンの問題を起こしてはならない。高性能エンジンよりも、ユーザーは信頼性を選ぶ。高速道路の途中でスピードダウンするという噂をユーザーは許さない。

その問題は解決されたが、エンジンを主役した広告展開をしてしまっただけに、その打撃は大きくなってしまった。今はネット上にそういった問題は残ってしまう。購入を考えているユーザーはそれを見る。

 

ファミリアのエンジンを流用した初代ロードスター

かつて、マツダはロードスターという車を開発した。そのとき、車に積まれたエンジンは新開発だったのかというと、そうではない。すでに発売されていたファミリアに使われていたエンジンだった。ターボ4WD版(1985年)は140馬力というラリーを意識したハイパワーだったが、ロードスターにはノンターボFF版110馬力(1986年スポルト16)を採用し、可変吸気システムを外してシリンダーヘッドやピストンを専用のものに代え、ハイオクからレギュラーガソリン使用に変更した1.6リッター水冷直列4気筒DOHC16バルブの120馬力で世に出した(1989年)。

新開発ではない、しかもターボでもないロードスターに乗った人々は「運転が楽しい」と言った。

もしこれがターボ版だったら、そうはならなかった。

自然吸気だから回転数を上げてやっとパワーが出る。かといってスポーツカーのように駿足ではないから、普段の使用でも少しは上げ気味で運転することができる。

2014年に発売されたデミオにも同じような現象が起こった。2011年に搭載されたガソリンエンジンは高圧縮スカイアクティブエンジンだったが、2014年型は高圧縮エンジンではない。高圧縮でなければ、それに伴う排気の形状などが必要なくなり、「普通のエンジン」になった。他の車種(アクセラ、CX-5)のようなスカイアクティブガソリンエンジンと呼べるほどでもないのだ。

しかし、その評判がいい。

回すと楽しいし、信頼性も高い。「どうして楽しいか」は誰も明確に答えられない。新開発でもなし普通のエンジンなのに、どうして楽しいのか。

それは、ロードスターと同じ。パッケージがいいからだ。

車の大きさ、重さ、形といったマテリアルと、エンジンの相性がいい。

初代ロードスターは940kg。デミオは1030kg程度。ライトウェイトだから加速はよく、ブレーキもハンドリングも優れている。そこにパワーを与えすぎなければ、楽しい車になる。踏むだけで楽しい。

試乗ではわからないかもしれない。街中で短い距離を走っても、エコ運転で踏み込まないユーザーにはそこを感じることがないからだ。

デミオも含めスカイアクティブのガソリンエンジンが優れているのは、たとえ踏み込んでもそれほど燃費に差がないこと。燃費の数値に恐れる必要がないのだ。

スカイアクティブはエコカー開発の一貫として内燃機関の燃費向上を目的として開発された。今後も燃費向上を目指して新たな技術を開発し、エンジンで人々を魅了しようとしている。

それは各メーカーに与えられた命題だから、やり続けなくてはならない。

だけども、新開発エンジンに問題が起これば、一気に購買欲はどこかへ去ってしまう。

「信頼性のあるエンジン」は、決して捨ててはならないのだ。

ディーゼルだけしか選べないCX-3のような愚策を繰り返してはならない。

ディーゼルエンジンもあと数年問題なければ、信頼性を再び得ることができる。その後、もしかしたらロータリーエンジンが出て、新型ガソリンエンジンも発表される。そのときに今のディーゼルとガソリンをないがしろにしてはいけない。

マツダのデザイン思想は国内他社と圧倒的な違いを見せ、それが熟成の域に到達しようとしている。だから、新開発エンジンじゃなくても、いい車だと感じる人はきっといるはずだ。

CX-5の360°動画はこちら
https://youtu.be/8heXj5PiY2k





  
 

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